立ち漕ぎ

その人気のない道は大通りへとつながっている。私が自転車を漕いでいると、向かいから二十歳を少し過ぎたぐらいの女の子が現れた。
人が行き交うのにも肩をぶつけそうな隘路だ。お互い道端に寄る必要があるなと考えていると、彼女は背中を壁に密着させて道を譲ってくれた。
気の利く女性である。軽く頭を下げてすれ違った瞬間、彼女は小さな声で呟いた。
「おゆき」と。

興奮のあまり、私は下り坂にさしかかっても猛烈な勢いでペダルを踏んでいた。