2014年度ノーセンスユニークボケ王決定戦〜前半〜(新宿角座)

永野、オジンオズボーン篠宮、新宿カウボーイかねきよ、サンシャイン池崎などの錚々たる痴れ者たちが、思いたった瞬間、後先を考えずにセンス不問でボケまくる「表現」というより「排泄」に限りなく近いライブ。という噂を聞いて見に行く。
幕が開くと、どうしたって目を引かれるのが、ピンク&アロハ柄のキティの上下(デザインが強すぎてもはやパジャマなのかスーツなのか機能がかすむ謎の衣装)、渦巻き模様のメガネ、出っ歯の入れ歯で全身を整えた永野である。まるで馬糞で固めた家が現代建築扱いされるかのように、その姿はノーセンスの上にノーセンスを塗り固めた結果、いよいよポップアートの域まで達していて、さらには予測不能のタイミングで「キャイーン!」、「シェー!」、「お前誰だよ」(by TAIGA)から、「僕、ラーメンネタでおなじみの小林賢太郎です」まで、脳をガバガバに開いた奇行と妄言を序盤から大放出。その暴走ロケットスタートに他の演者も追走し、そこに客席の緊張と興奮が相まった結果、このまま続けば誰か失神者が出るかもしれないと不安になるほど、劇場はヒステリーに近い哄笑が炸裂するのだった。しかし開始20分も過ぎた頃、永野の笑いが「6割が他の芸人のギャグで、3割がダジャレで、1割が洗脳されていた頃のX-JAPAN TOSHIの顔マネ」というカラクリにうっすら気づきだして、かろうじて正気を保つ。
その後、ライブは数々のコーナーが行われては、全出演者が「ノーセンス万歳」をお題目に、あらゆる設定とルールを壊し続けていった。即興の芝居をこなす「ノーセンス新喜劇」に至っては、最初に蕎麦屋の店員役で登場するはずの永野が「猫に憑かれた男」として這って出てきた瞬間から全てが狂っていた。もはやこれはカオスではない。ただの病室である。
そんなライブは2時間の間、舞台袖にちょくちょく消えては持ちネタをせっせと仕込み続けたくまだまさしが優勝。「演芸」が「祝祭」をねじ伏せる感動的な瞬間だった。ということは全くなく、年末の決勝戦の進出を告げられたくまだは、「えっ、それ出演しなきゃいけないんですか?」と出所の延期が決まった受刑者のような表情に。私もよく知らなかったのだが、このイベントは第4回目で、さらに今回が前半戦だったらしい。どえらいサーガに巻き込まれたもんだ。とりあえず小林賢太郎氏と、その名前を検索してこの文章にたどりついたハイセンスお笑いファンには、私が代表して謝っておきたい。