ミルクプロレス(シアターブラッツ)

komecheese2012-08-23

「ミルクプロレス」とは、ミルククラウン・ジェントルをエースに擁し、「女子が引かない、痛くなさげなプロレス」をコンセプトに立ちあがった、地下よりなおも深いマントルプロレス団体である。
と偉そうに書いてみたものの、私も伝え聞いただけで詳細は知らない。東京吉本若手単独祭り一覧の中に「ミルククラウン単独」ではなく、「単独ライブSPイベント ミルクプロレス」と書かれた不穏さに惹かれて、会場へと向かう。
さて劇場のシアターブラッツは通常のように舞台と客席が二分されておらず、中央の黒いマットを客席が囲んでいる。どうやらあの寝袋の下に敷くようなやつがリングであるらしい。本当にプロレスができるのか疑っていると、第一試合が始まった。お笑い界屈指のレスリングエリート・ネルソンズと、もはやキックボクサー3人組の0・03秒による、変則タッグマッチである。重いタックルが響く。ハイキックが鋭い音を立てる。目の前の攻防に会場中が息を呑んだその時、コミッショナーミルククラウン・竹内が一喝した。
「何やってんだおまえら! そういうの求めてないから」
バチバチの激しい試合が、「痛そうでイヤ」と映ったらしく、試合はノーコンテストに。この瞬間、プロレスが守るべき団体のモラルラインが西口プロレスよりもずっと低いことを確信した。
さてその後は、ギャグコントラギャグ(ギャグ封印マッチ)だのハンディッキャップ大喜利マッチだの展開されるのだが、特にすごかったのはモノマネタッグマッチ。アントニオ猪木(こりゃめでてーな・広大)、グレートムタ(ハンマミーヤ一木、ざしきわらしサスケ)のプロレスラーギミックを駆使するのは登場時だけで、いざ試合が始まると全く試合の趣旨と流れとは無関係のとくこが加わり、各自がやりたいモノマネのパレードに。それも岩崎宏美やら武田鉄矢やら、多くがコロッケの影響を清清しいまでに隠さないやつだ。あれはプロレスでなければ、戦いでもない。ましてやモノマネでもない。ただの「コロッケへの憧れ」である。その中でDA PUMPの歌詞を「いかに自分のチンポはデカいか」の主張に加工して歌い上げる「チンコデカISSA」というキャラクターを披露していた広大。ここに至ってはコロッケへの憧れすらなく、ISSAのチンコはデカいというイメージしかない。そんなことより、これどこに需要あるんだ。
とにかく客は100名弱なのに次から次へと芸人が現れ、手間も採算も合わないはずなのに、充実の興行だった。私のベストバウトはギャグコントラギャグのOGENKO(ポテト少年団・中谷)とブレーメン岡部。試合自体は犬が甘噛みしあうようなじゃれ合いだったが、途中、岡部が冗談で出したラリアットがスーパークリーンヒット。新日の中邑だったら四回転ぐらいして吹っ飛んでると思う。