川越ナンバーのリムジンに乗るサイタマノギャングスターラッパー

下高井戸シネマで『サイタマノラッパー』を見た。
この映画の舞台になっている埼玉県深谷市には、サラリーマンの頃に何度も仕事で足を運んだ。埼玉県を軽く見下しがちな神奈川県出身の私からすると、あんな駅前にキンカ堂しかない町でラップやってるなんてちゃんちゃらおかしいのである。ダサすぎる。イタすぎる。拙すぎる。
だからなのか、映画館を出た途端に泣きそうになってしまった。去年見た『アンヴィル』も『レスラー』も「滑稽かもしれない。でもやるんだよ!」のスタイルに感動したけれど、あれは少なからず才能もあって一度はスポットライトを浴びた”彼ら”の物語である。でも『サイタマノラッパー』は結局何もできちゃいない”僕ら”の物語だ。揺さぶられた。
この映画を見に行ったのは、ラジオでライムスター・宇多丸が絶賛して、「この規模の映画でDVDなんか出ると思うな。映画館行けよ!」と吠えていたからに他ならない。「部屋に貼られているカリスマラッパー・MC韻神のポスターに「1985年の引退」って書かれてるの、時代考証がおかしくね?」といった類の指摘があまりにもどうでもよくて下のyou tubeではカットされていること、この映画に感動したYOU THE ROCK☆が広報活動に全面協力していたこと。振り返ればどれもイイ話である。
映画を見た帰り道、映画の余韻をひきずる私のiPodからはキング・クリムゾンが流れていた。しょうがねえじゃねーか、ヒップホップなんて入ってないんだもん。