マッスルハウス9(後楽園ホール)

1年ぶりのマッスルは「リングオブコント」と称して、おもしろプロレス8試合がお笑いコンテスト方式で鎬をけずる内容。これまでおおむね前半・後半に分けて質の高いネタを2本叩きつけてきた、いわば文学賞レベルの中編2本で単行本を構成していた純文学作家が、中間小説8本を収めた短編集を緊急出版した装いに。「引退セレモニーがしたくて復帰した」と語る広田さくらのリングが、最後の一言でそっくり転覆して実にコントらしかった。
それよりなによりリングオブコントの審査員である。ステージにはDDT社長の高木三四郎、プロレス評論家レスラーの高木元太郎が現れて、次が東京スポーツの松本・・・ちょっと待って! あんたTスポのM本さん(トレインスポッティング新聞のマクレガー本さん)じゃないか! 2日前、門前仲町の立ち飲み屋で飲んだ時、「M本さん、4日のマッスル行くんですか?」と水を向けたら、「いやー僕その日いろいろありまして行けないんですよー」と言ってたじゃん! 「よく考えたらマッスルを生で見たことないんですよね」とも! それが! なにゆえ!
審査員としてマイクを握ったM本さんは「プロレスは運動部の担当ですが、今日はマッスルなんで文化部の僕が来ました」と挨拶して場内は拍手喝采。そこで私は「この後の審査で気の効いたコメントを連発したり、隣の反応を執拗に気にする島田紳助ギャグ、いきなり90点台後半の高得点をつけてその後の審査が立ち行かなくなる桂三枝師匠ギャグ、隣の生田悦子にボタンを押してもらう淡谷のり子先生ギャグで人気が出たらまずい!」と不安になり、観客席の一画から「コメントスベれ」の邪念を送り続けた。そのかいあってか、M本さんのコメントが爆発することなく、というかごく真っ当に審査員の職務をこなして、大会は終わっていった。
そしてこの3日後、M本さんが休暇で沖縄へ旅立つと、その日から沖縄は梅雨入り。沖縄まで届く私の邪念に、政府が海兵隊に代わる抑止力として注目しているとも聞く。