東京クレイジーサミット!!(ロフトプラスワン)

レイザーラモンRG,ハブという吉本を代表するクレイジー芸人にくわえて、スーパーのサミットで品出しのアルバイトに精を出すハリウッドザコシショウ。そんな傾き者3名ががっちりがつがつ手を組んだ「クレイジーサミット」なるイベントが、歌舞伎町で夜を徹して行われるという。夜は眠いし何よりお化けが怖くて苦手なのだが、NDRGW(日本を代表するRGウォッチャー)としては行かないわけにも行かず、会場へと向かった。
0時30分。勤勉な人間がすやすや眠る時刻、三沢光晴の入場曲「スパルタンX」が会場に流れ出した。すると三沢の格好をしたザコシショウが現れ、それについて回るRGとハブ(新人時代の丸藤と金丸をイメージ)が体に触ろうと押し寄せるファンを「やめてください」「危険だから!」と阻止。当然、推定30名弱の客の中には汗ばんだザコシショウの体に手を伸ばす者が誰もおらず、十分以上、バターになる勢いでフロアをぐるぐる徘徊していた。
さてその後は4時間もの間、各自がピンネタを披露して、RGが中島らものモノマネをしながら「ホテル・カリフォルニア」にのせて「八王子あるある」を熱唱したり(岡村靖幸の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」にのせた「墨田区あるある」で、元・岡村靖幸ファンクラブで現・墨田区民の私は少し泣きそうになるが「某芸人が墨田区にマンションを購入」というあるあるを聞いて怒りを覚える)、ハブが寿司米のいい塩梅を教えるため、客の指二本を自分の尻で挟んだり、ザコシショウがデカパンを面白く引っ張りあげるだけの漫談をしたり、それはそれはさまざまな魑魅魍魎が展開されたのだが、それも今となってはもうどうでもいいことだ。
時は朝の5時。エンディングということで3人が舞台に上がると、何やら懐かしい音楽が会場に鳴りだした。この曲は「マツケンサンバ」――そう、「ハブの耽毒祭」で演者、客、スタッフを無間地獄に引きずりこんだ「ハブタンサンバ」が奈落の底から再び蘇ったのである。
「みなさんが全員帰るまでやめませんよ!」の宣言が威勢よく響いた後、「マツケンサンバ」に合わせて、腰を振り、軽やかにステップを踏み、男3人がご陽気に踊る。そして曲はフィナーレへ。
♪ビ〜バサ〜ンバ。ハ〜ブ〜タ〜ン、サ〜ンバ〜、オレッ!
しかしまたイントロが流れ出す。「マツケンサンバ」に合わせて、腰を振り、軽やかにステップを踏み、男3人がご陽気に踊る。そして曲はフィナーレへ。
♪ビ〜バサ〜ンバ。ハ〜ブ〜タ〜ン、サ〜ンバ〜、オレッ!
しかしまたイントロが流れ出す。「マツケンサンバ」に合わせて、腰を振り、軽やかにステップを踏み、男3人がご陽気に踊る。そして曲はフィナーレへ。
♪ビ〜バサ〜ンバ。ハ〜ブ〜タ〜ン、サ〜ンバ〜、オレッ!
しかしまたイントロが流れ出す。「マツケンサンバ」に合わせて、腰を振り、軽やかにステップを踏み、男3人がご陽気に踊る。そして曲はフィナーレへ。
♪ビ〜バサ〜ンバ。ハ〜ブ〜タ〜ン、サ〜ンバ〜、オレッ!
気がつけば30分が経過していた。
灼熱の日光にやられて枯れてしまった植物のように、テーブルに手をついてじっと動かないRG。精神に異常をきたしたとしか思えない快活さと健気さで最後の力をふりしぼって踊るハブ。前田敦子を思わせる低カロリーダンスでサンバを右から左へさばき、修行僧に近い寡黙さで踊り続けるザコシショウ。いい加減酔いも醒めて正気に戻った客が帰りだしている。
それから10分。ボロボロになって踊る3人。店のスタッフが会場の後片付けを始めた。会場の隅にいる芸人のスタッフはもう笑っていない。
それから10分。「ハブタンサンバ」は鳴り止まない。3人が「マツケンサンバ」を踊るコンセプトはいよいよ霧散し、舞台でザコシショウが曲と関係なくエンゼル風のマッチョポーズを取ると、フロアに下りてしゃがみこんだRGとハブがそれを指差し爆笑していた。(ちなみにこれがハブ耽サンバの映像で、ザコシショウのポージングはスコット・スタイナーのモノマネだったらしい)
やがて時計が6時を差すと、誰の指示かは全く分からないが、会場中の「誰か早くリングにタオルを投げ込め」という感情が臨界点に達し、曲がフェイドアウトしていった。その場で動けなくなる3人を、どういうつもりか最後まで残った10人前後の客が拍手で湛える。
手を叩きながら私は「これで来世と再来世分の「マツケンサンバ」は聞いたな」と考えていた。