串揚げ屋のソース壺から金の串を持った妖精が。

往復バス車中泊という強行軍で大阪へ。
所用を終えて夕方に立ち飲み屋で飲んでいると、宵の口から早くも目が座った赤ら顔のオッチャンに声をかけられた。
「兄ちゃんは山へ登るんか?」
「いや、別に登らないですけど。僕、普通の格好してるでしょ」
「山は登らん? じゃあパチンコ山に登るんか?」
「パチンコ山? パチンコ山には輪をかけて登りません」
「そうかー。兄ちゃんはどこから来た」
「東京なんです」
「ホウジョウ? あったか、そんなとこ?」
「あのね、大阪住んでるんじゃなくて東京から来たんです東京から」
「それは梅田より北か?」
「方角でいうと、相当東になります」
「何区にあんねん?」
「僕は中野区に……だから東京なんですってば」
「トーキョウトーキョウって、わしは分からんがな! ……それより兄ちゃん、(親指と人差し指で円を作って)いくらもろうとる? 月にして」
「ええええええ!? なんで会って2分でそんな腹割った話を!」
「ああすまんのーオッチャンの悪い癖が出てもうた! で、手取りで30万くらいか」
「全然反省してないでしょ。まあ、そんなもんです」
「家賃はなんぼや」
「7万ちょいですね」
「ということはマンションに住んでるんやな」
「うーん、マンションというほどでは。アパートとの中間のような」
「アパートはいかんぞアパートは! 壁が薄くて隣の声が聞こえるからな。それより兄ちゃん、ワシは2500万円でマンション買うて、今住んでるさかいに」
「オッチャンが? 見えないなあ」
「3LDKや」
「それはそうと、さっきから気になってたんだけど、オッチャンの胸ポケットに収まってるバンソーコみたいな箱は何なの?」
「これか? さっき薬局で買うた、いびき防止テープや。なんや隣の部屋からワシのいびきがうるさい言うて、部屋の壁をドンドン叩かれるからな」
絶対にマンション住んでないと思う。以上、全部実話。