シベリア少女鉄道『VR』(駅前劇場)

ワンアイディアに基づいてハイパーなバカコントを作り上げる劇団・シベリア少女鉄道は、手術室を舞台にした「ER」のパロディ。

バカを塗りたくったらリリカルな詩ができたような舞台に満足していると、席を同じくしていた者が「この手法って昔××がやってたよねえ」と感想を述べるので、リピーターから前回公演と比較の俎上にさらされやすい劇団の不幸に改めて気づく。2度見たら早くも「前の方がよかったよなー」という“とんこつラーメン屋パラドックス”が語られ、その論理に尽かれた者からはしばしば演技力の向上すらも否定されてしまう。

はたして今回は劇場の天井が突き抜けるほどの新しいアイディアはなかった。しかしバカの濃度を濃くしてとんまの精度を高める方向性は見えたのである。新しいスープが生まれなければ、チャーシューを異様に煮詰めたり、海苔を花びらのように敷きつめたり、生海老入れたコップで裸の女をくすぐるなど、“方法論”ではなく“工夫”で勝負する段階に入ったのではないか。

それにしても横溝という挙措が不自由な役者は、立ち振る舞いがいちいち私に似ていて困る。具に紅しょうがを切らしたからとりあえずチェリー入れときましたって存在感で冷静に見れないんだよ!