白井貴子&Crazy Boys with Wild Cats

未明に目が覚めた。頭の奥で小さな炎が揺れている。それがなかなか消えず再び眠りに戻れない。
僕は枕元のi Podを引き寄せてシャッフル機能で聴く。懐かしい白井貴子の曲が耳に滑り込んできた。10代にラジオを好きになりだした頃、僕は彼女の深夜放送をよく聞いた。『Next Gate』『Sing』『Color Field』。そんな曲に耳を傾けながら、頼りない蝋燭に灯された脳裏にいろいろなことが浮かび上がる。昔の音楽のこと。友達のこと。旅のこと。それはどれも懐かしいこと。
気がつくと東の空は白々と染まっていつもの朝を迎えていた。僕は郷愁を胸に漂わせながら、ぼんやりとした気分でテレビをつける。日曜朝から流れる『遠くに行きたい』では、有明海を旅する白井貴子が現地民と一緒に笑顔で吸い餅を吸っていた。あわててスイッチを消した僕はベランダに下りて朝焼けに目を凝らす。そうなのさ。ロックンロールはいつまでも終わらない。