喬太郎、跳ねる 其の七(お江戸日本橋亭)

キャパ200人程度の座敷は、常連客が落語界の内輪ギャグに咆哮笑いし、新参客がその空気に戸惑うという熱湯風呂・ミーツ・パピコのような空気。敏感にその温度差をいじりながら柳家喬太郎は『純情日記・池袋編』で突然「名人の落語がなんだ! 今の噺家を見ればいいじゃないか!」と叫び、『猫久』では入りの口上を間違えたので急遽噺を『子別れ』に変える展開に。その姿は心のままシャウトし、ギターの弦が切れたといっては楽器をバンジョーに変えるロックスターのようだ。本当に跳ねていた。舞台もリズムも。
もっとも驚いた演目は最後に切り出した『棄て犬』で、新作落語なのに壮絶なまでの後味の悪さ。くだらなすぎる犬の模写の影でこんな牙を隠しているなんて。見終わったあと、笑い以外をつきつける落語の懐の深さを考えながら、東京駅を目指して道に迷う。私は野良犬にさえなれない。