高嶋政伸が主演の日本版ホテル・ルワンダ

今、東横インと並んでもっとも有頂天とは無縁のホテルの物語『ホテル・ルワンダ』を見る。感想はといえば「支配人の勇気に感動した」「こんなアフリカの悲劇を知らなかった俺って一体……」「主人公の名前がポール・ルセサバギナ。ポールにバギナって両性具有か」といたって凡庸なものばかり。そんなことを綴っても詮無いので、有益な情報をひとつ。
私の本棚にある松本仁一『アフリカで寝る』(朝日新聞社・96年刊)。この中の「ルームキーがない」を読み返してみると、偶然にもミル・コリンホテルのその後の光景を描写しているのだった。
反政府軍が制圧したルワンダを訪れた作者は、首都に2軒しかない本格的ホテルのひとつ、ミルコリンズ・ホテルへと向かう。つまり戦後も営業を続けていたわけだ。部屋の状況は「すみには本来の住人の荷物が積み上げられ、テーブルには食べかけのオレンジ、ベッドには新聞が広げられている」レベルで、支配人の話によれば残っているルームキーは100室あまりのうち44室のみ。3日後の予約をして取材旅行に出かけても、帰ってくると部屋は埋まっている。戦後の混乱は簡単には収まらなかった。ツチ族主体の政府が出来たことでフツ族は首都から逃げ出し、無人になった家にツチ族難民が住み込むような状況だったらしい。シアターNを運営する日販は、劇場にこの本も置けばいいのに。
同エッセイを久しぶりに読んで、改めて映画を振り返ってみる。そこで胸中に広がるのは「ポールの妻のタチアナも、微妙にエロい名前だな」という思いだ。