秒殺(ルミネtheよしもと)

この日、日本橋では立川談笑独演会、下北沢では横須賀歌麻呂単独という狂おしいライブが重なり、選びかねて中間の新宿へ。しかしよく考えたら、大勢の芸人が2時間にわたってひたすら一発ギャグを重ねる「秒殺」と前述のライブの違いは、舞台上で狂ってるのが一人か複数かということだけである。
全盛期の狂気がギャグとして見事に昇華していたジャリズム・渡辺のセンス、一人だけ規制の異なるエンジンを搭載したFUJIWARA・原西のパワー、一人だけギャグが身体に染みついていたジャンクション・下林の安定感など、さすがに見所は満載。その中でも私の好みだったのは、芸歴十数年を経て見せるべきものが”技術”でも”度胸”でもなく”愛嬌”だけだったガリットチュウ・熊谷。要所要所でセリフを噛んでは場内が騒然&爆笑。あの成熟のしなさ加減は才能かもしれない。
もう一人忘れてはいけないのが、Bコース・ハブだ。体の柔らかさを活かして客席から見にくい角度でギャグを次々と繰り出すも、どれもが「下ネタ」「畸形」の2つに集約できる内容のため、私以外の客からはほとんど共感の笑いを得られない結果に。『キワモノ演芸』でハイキングウォーキング・鈴木Q太郎の開発したゲスな芸が本芸に好影響を与えたように、ハブも『キュートン』で披露した「マンペ漫談」が芸風に新しい化学反応を起こしている模様である。もちろんすこぶる悪い意味で。