路漫(BLOCH)

仕事が少なくヒマが続いたので「オホーツクの海に身を投げようか・・・・・・」と北海道旅行へ。着くなり直行した旭山動物園のアザラシが最高に可愛かったので、あと200年は生きる気力が湧き、ついでに札幌吉本所属の若手芸人ライブを見に行く。
とにかく驚いたのは芸人と客の距離感。ライブ前には親しく会話しているし、ライブ後は客の7割がアンケートに感想を綴って席を立たないのである。もちろん首都圏にもその手のファンはたくさんいるが、そこには他のファンと水を開けようとする優越感だったり恋愛感情を満たそうという”取引”の匂いが立ち込めるのに対し、札幌のファンが形作るのはひどく素朴な”応援”の風景なのだった。ただ本当の勝負をするには上京の手段しか方法がないことはおそらく芸人も客も肌身で感じているわけで、それを誰も口に出さない哀切が会場にはしんみりと張りついていた。
さてライブはといえば、グリーンランドとタイブレイクという若手2組がネタ、合同コント、シャッフル漫才、リアクションものや変則大喜利の企画コーナーをこなす、フォーマットに沿ったしごく折り目正しい内容。『マンスリーよしもと』の各地イベント情報に目を通す私は、以前から「ここ数年、大阪吉本の若手は大阪で売れてから上京し、福岡吉本の若手は売れる前に勢いで上京し、札幌吉本の若手は静かにフェイドアウトしていく」状況を不思議に思っていたのだが、取り立てて実力が劣るわけでもないし、謎は未解決のままに。中でもボケの量産力が目を引いたタイブレイク・飯田(ボケる抑揚と表情がタカアンドトシのタカにそっくり)と、前説で出てきてツッコミの反射神経と仕切りの上手さが群を抜いていたブーメラン学園・酒井は、二人とも1987年生まれの21歳だという。これだけ若ければ、私の唱える「札幌吉本の若手フェイドアウト説」はそのうち簡単に覆されるかもしれない。今日見た何組かが東京進出する手立てを失わないよう、その日までスカイマークエアラインが存続していることを祈るばかりだ。