ナイツ「21世紀大ナイツ展」(シアターモリエール)

デビュー以来の、幻のコント期→毒舌漫才期→漫才コント期→野球漫才期→現在の言い間違い漫才までをネタでたどる考古学ライブは、1時間半3000円の単価も納得の濃縮度。これまでの名作をつぎ込んだ言い間違い漫才4連発も既視感であふれているのに、情報量が多くて全然飽きない。浅草キッドや爆笑問題の系譜に連なる”活字系漫才”の級数をさらに落として継承した感じだ。
なお客席は寄席や身内の人脈なのか客層が圧倒的に幅広く、笑い声が若手単独とは思えないカラフルさ&分厚さ。最前列でかじりついていた少年はナイツが通う浅草のレストランの息子らしく、小学生ほどの年齢で早くも浅草東洋館に通ってるという。お笑い慶応幼稚舎・プレハブ分校在学中のエリートぶりに私は嫉妬を覚えた。
さて開演直前、私は膝の上に置いた鞄を椅子の下に移動させようとしたら、女性もののバッグがちょこんと置いてある。それより問題はそこにあるはずの私の折りたたみ傘がないのだ。どこにいったのかと思ってキョロキョロしていると、後席の婦人が声をかけてきた。
「あら。私の鞄邪魔だったかしら」
「いや別にいいんですけども。というかここにあった傘知りません?」
「傘? 傘ねえ……。あっ」小首を傾げていた婦人は何か思い出したらしく、鞄をガサコソ探すと私の傘を取り出した。「ごめんなさい。自分の傘と間違えて、しまっちゃったみたい」
はて、すでにそこにあった傘を自分の傘と間違えるものだろうか? しかし品も身なりもいい女性なので、私のみすぼらしい傘を盗もうとした可能性はゼロよりも低い。ずいぶん面白い間違いをする人だなーと思いながら、私は傘を受け取った。
そしてエンディング、舞台上からツッコミの土屋が「今日は僕の母親も来てますから」と指を伸ばすと、その先にはさっきの婦人(元演歌歌手・津島明希)が! 土屋はボケの塙だけでなく親族の間違いも正しているのだろうか。