気まぐれで職業欄に「天皇」と書いてみる

komecheese2008-10-31

ザ・ハイロウズに「映画」という曲がある。自分が住む街の小さな映画館に楽しみにしていた映画がやってくる、というそれだけの内容が聴く者の胸を打つ甲本ヒロトらしい佳曲だ。そして僕の街にも映画がやってきた。その映画は『天皇伝説』。映画と一緒に監督の渡辺文樹と右翼と公安警察と週刊新潮の記者もやってきた。テレビで終日宣伝をやっていたのでこの映画のことを知らない人はいないと思うが(もしかして『相棒』と勘違いしてるかも……)、念のためチラシに書かれた文章を引用しておこう。
「国民はいつまで騙され続けるのか―
明治天皇は大室という男が入れ替り、
大正天皇には子種がなく昭和天皇には、西園寺公望養子の養子の血が入り、
そして平成天皇裕仁の子ではなかった。
さらに秋篠宮もやはり明仁(現天皇)の子ではなかった。
皇室内の血みどろの戦いと海外皇室財産とイラク侵攻の背景を追及する。」
何だこの「いい」「悪い」の感情を持つことすら拒むような圧倒的な文章は。もちろん私は「ノーコメント」という凡人丸出しの態度を貫かせてもらいます! それにしても「大正天皇には子種がなく昭和天皇には、西園寺公望養子の養子の血が入り、」の独特なブレスも、いちいち不穏だ。
さて上映会場に向かうと、上映予定だった土地土地ではトラブルが勃発しているのに、墨田区は世界への発信力に欠けると判断されたのか、いたって平穏。普段と違うのは、劇場の周りを100人近い警官がスタンバイしていたことぐらいである。やってきたのは映画と渡辺文樹だけだった。
そして肝心の映画の内容は、ジャーナリストの主人公を演じる渡辺文樹が戦後の闇歴史に土足で踏み込んでいくのだが、脳内で繰り広げられる陰謀史観が複雑&説明不足すぎて開始3分を過ぎてからビタ一文理解不能! ただラスト20分を飾る雪山でのアクションシーンが『クリフハンガー』と『ホワイトアウト』を足して蕎麦湯で割ったようなほのぼの感(ロープウェー上でツルハシを振り回す決闘は、グラビアアイドルのポカポカドボンに匹敵するぐらいにスリリングだ)だったので、心が温まったのは事実である。
映画の後は大衆酒場に繰り出し、一緒に観賞したKさんが呟いた「結局、監督が自分の顔芸見せたいだけじゃねーか」の言葉に深く頷く。私が『天皇伝説』を見ながら思い出した映像は、日テレのモノマネ番組内ドラマで竹内結子の扮装をしたイジリー岡田がスキー場の斜面を滑り降りて、最後、橇が吹っ飛んで骨折する場面だった。