立川流一門会広小路寄席(上野広小路亭)

先日、数年ぶりに大学の後輩から電話がかかってきた。応答するなり、「17日の夕方って空いてます?」と訊かれる。
「なんで?」
「実はR-1ぐらんぷり決勝の観覧が当たったんですよ。人数揃えなくちゃいけなくて、工さんならお笑い見るし、その時間空いてるかなーって」
手帳を開くと、17日の予定は余白である。
「うん、空いてるね」
「あ、予想通りだ。じゃあお台場行きましょうよ」
「でもR-1でしょ?」
「そうですよ」
「じゃあいいわ」
「ええ? どうして!?」
どうしてもこうしても私にとってR-1ぐらんぷりは誰が優勝しようが誰が1回戦で落ちようが一人だろうが何人でステージに上がろうが興味の湧かないコンテストであって大会が終わった数日後に「え、もう終わってたんだ。優勝したの、誰?」と人に訊ねるぐらいの姿勢で挑みたい、との旨を説明すると、後輩は私の生き様に感銘を受けたらしく、「ちいせえー! あんた人間がちいせーよ!」と電話を切った。
どうやら私のR-1に対する姿勢は世間に伝わってなかったようだ。ならばこの際、「田村潔司が新日本vsUWFインター対抗戦に背を向けて道場で一人練習していた」伝説のように、「R-1の収録を断ってライブに向かった」という英雄的エピソードを作っておこうと、ただそれだけの理由で立川流一門会に行ってみる。
そして中入り後の会場に千円で潜り込み、お目当てだった立川左談次の出番を待っていると、なかなか出てこない。どうやら一門会HPの出演日程を読み間違えてしまったみたいである。
結局、トリの土橋亭里う馬の高座を見終えた私は、会場から出ると空を仰いで「やっぱりお台場に行けばよかったかな」とつぶやいた。