円丈の骨、白鳥の肉。ふたたび(国立演芸場)

三遊亭円丈と白鳥の親子会。白鳥は浅草の劇場を舞台にしたノンフィクション巨編「悲しみの東洋館」で気を吐く一方、円丈は「ウォーキングそば」で「これぞ!」と膝を打つぐらにスベっていた。
しかしただスベっていたのではない。この噺、古典落語の「時そば」を白鳥が「トキそば」という怪作に仕立て上げ、円丈はさらにそれを「ウォーキングそば」へとアレンジしたのだ。まず親子会で弟子の作った作品をやろうという心意気がすごい。そして「弟子よりウケたい!」と作り変える気魄がすごい。その結果、原型を留めない作品ができあがり、挙句の果てにスベってるのだ。キャリアが40年以上もある師匠なのだから腹に入ったネタをかけて一元的にウケることなんて難しくないはずなのに、いまだにもっとウケようと努力を凝らして多元的にスベってる。その後に披露した足立区が舞台の老人もの「一ツ家ラブストーリー」はつつがなく面白かったけれど、私が心を動かされたのは断然「ウォーキングそば」だった。
それにしても「ウォーキングそば」まで変わると、語感としては「時そば」より「Dining若」の方が近いな、と思う。