ダイノジ芸歴15周年記念単独公演「人生漫才」(ルミネtheよしもと)

久々のダイノジ単独ライブへ。破綻のないコントが詰め込まれてごく標準的な単独ライブの様相が一変したのは終盤のこと。体感の公演時間が2時間を過ぎても終わる気配がないのである。19時に始まった単独は21時に終了して、次の公演が21時30分開場、22時開演のはず。「大丈夫かいな」と余計な心配をしていると、なんと大谷が柳家喬太郎の名作「与話情浮名夕鶴」を堂々と始めたのである。
ダイノジの単独だと言ってるのにかかわらず、最後の最後にきて落語をかます渾身のスタンドプレー。しかも2年前、浅草東洋館の「ダイノジvs柳家喬太郎」で膝上から上下を切っていた人とは同一人物とは思えないぐらい上達していて、さらには噺の中に自分の芸人人生を織り交ぜてオリジナルホールドにまで昇華させていることに息を呑む。
そしてなぜか大江千里の「YOU」が流れ、ダイノジが最後の挨拶をして公演は終了。と思いきや、会場に世紀末極悪芸人兼警察関係の営業を欠かさないキャプテン☆ザコと具の入ってない米ディアン・おにぎりが乱入すると、ここに来ての前説芸をブチこむ展開に。その後、再び幕が開くと、m.c.A.T師匠のアンセム「コーヒー・スコッチ・マーメイド」で踊り狂う単独の定番「ダイノジロック」へと突入する。上記のメンツにくわえて、レザボア・ドックスのような若手芸人集団と新体操姿のいとうあさこが揃い踏みした舞台は「カオス」という言葉以外が見つからなかった。
ようやく本当に終演を迎えて時計を見ると22時前である。会場を一歩出た途端、フロアには次のライブを待ちかねるファンの「いつまで待たせるのよ……」の殺気がライターの点火ひとつで爆発するほどに充満していた。最終的には「大谷のナルシズムが周囲にあらゆる迷惑を撒き散らし、結果、突き抜ける」というダイノジの本領が最大限に発揮され、私は国境を越えた無酸素地点で陸上の世界記録更新(参考記録)を目撃した気分になった。
なおこのライブの意義は近日、大谷さんのブログ「不良芸人日記」でとめどなく語られるに違いない。たぶん「終わった。」の一行で始まり、「最高傑作」の自賛と「途中、何度もダメかと思った」の回想、それから新人バンドの紹介、突然の人生相談(メール全文掲載)、川崎のアホーメン、札幌のジンギスカン「だるま」礼讃を経て、最後、森和尚へのダメ出しにたどりつくことを予想します。