人生相談券付き落語会「噺家人生コレ落語」(お江戸日本橋亭)

落語家が己の人生をネタにするという趣旨に、ただただいい匂いを感じて日本橋へ。「詳細は絶対ネットに書かないように」という勧告のもと披露されたのは、三遊亭亜郎が前の師匠・小朝にいかにハマり、いかにしくじったかという栄枯盛衰や、夢月亭清麿による捜査一課の刑事だった父親のダ−クトークなど。全くもって興味は尽きない。
そしてもっともそそるのが、×××の××から2億円を引っ張り出して、競輪で全部スッたという三遊亭小歌である。しかも数日前に緊急入院したため、出る予定だったこの会は不在。円丈が「本当に入院なんです。私がお見舞いに行った写真ありますから」と示した写真には、首にムチウチ用ギプスを巻いている老人が「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のポスターさながらあらぬ方向に視線を泳がせており、その様子は被害者と言われても加害者と言われても納得できそうな佇まいで(もはやロールシャッハテストだ)、つまり「事件」の香りがぷんぷん立ち込める一枚だった。娑婆に帰ってくることがあれば、ぜひ師匠の高座を拝んでみたい。
と言いながらそれ以上にインパクトがあったのが、芸人がそれぞれの人生を吐露する中、42歳で入門した必殺の武器があるにもかかわらず、その話に全ふれないで古典の「死神」をポクポクこないしていた三遊亭たん丈。