ITADAKI FINAL9月(シアターD)

「芸人を引退して、タレントになる」ツイートを書いては消し、それがアングルなのか本気なのか外野は理解できず、台風前の湿った気配を発散させている中山功太。その才能が表舞台から消滅するのはまだ早いと思う人間の一人として偉そうにも何かせねばと思い、現在、限られた収入源であるはずの手売りチケットを購入する旨をツイッターで申し出て、会場に向かった。受付で名前を告げると、楽屋から功太が現れる。最近の舞台も見ているので体重増は折り込み済みだったが、髪をいつの間にか金髪に染め上げていて、その姿を見た瞬間、全然似てないのに私の脳裏には「小朝」の二文字が浮かんだ。なおライブのエンディングでは「俺は芸人やなくてタレントやから」とぐんぐん前に出て、“事情は分からないけれどなんだかややこしい感じ”で観客を抜群に戸惑わせる功太。この薄目を開いて眺めたくなる不穏な空気は、なんだかんだ言っても芸人にしか出せない味であると私は思う。
さて遅まきながら初めて足を踏み入れたイタダキライブは、女子高生が歓声を上げる意味での「若手芸人」の引導を渡された、芸歴10年以上の「若手芸人」だけが集まる、私にとっては最高すぎるライブ。この日の出演芸人をざっと挙げただけでも、ジョイマン、ですよ。のメジャー経験者、とくこ、ペレ草田の「あらびき団」残党、パタパタママ、どんぴしゃ、烏龍パークの上京勢、チャド・マレーンはいじぃ、アンナの「5じ6じ」閥、ギンナナ、ふくろとじ、セブンbyセブンモリエールシアターブラッツで各自100回は見たことある軍団、九州地区私立全寮制男子高校ズ、ランディー・ヲ様、ANDリーの「10年目だそうですが、どうもはじめましてこんにちは」芸人などなどなど、豊漁も豊漁の布陣だ。私の魚図鑑に載ってなかったピン芸人ランディー・ヲ様は、天竺鼠・川原を一回シャブ中にして再起させたようなサイケな芸風で、大変心をくすぐられた。検索して調べたら、最近インディーズから吉本に引き揚げられたらしい。ホリプロから移籍したメグちゃんといい、吉本の漁船は功太という高級魚を冷凍にしたまま、どこに網を広げているのだろう。
それにしても知らない芸人はまだまだいるなーと思っていたら、エンディングの告知タイムで耳にしたのが、「先輩のジンギスキャンさんと」「僕の同期のポリポリポリ助が」「今度、美川憲二さんと共演するんですけど」。ここまで来ると、さすがの私も検索しません。