女と男のイル・ホドン(韓国人)

帳を落とした冬の冷たさは朝露に濡れたオレンジに似ている。そして群青色に染められた空を見上げれば、天蓋は果てしなく遠い。こんな夜、僕は少し時代遅れのピーコートの中で肩を縮めながら、ヌーベルヴァーグが見たい気分になるんだ……。そう、懐かしいペチカのようにいつだって映画は僕の心を暖めてくれる。
というわけで見てきましたムエタイアクションのタイ映画『マッハ!!!!!!!!』。ゴダールなんて見たことねえよ莫迦、愛なんていらねえよ夏、映画語ってモテようとする奴はみんな死ね(by町山智浩)。何これ、すごすぎるよ! 小学4年生が見たら実家の2階から庭で呆けている猫に飛び膝蹴りをお見舞いしたい衝動に駆られることは必死。アクションがジャッキー・チェンの全盛時ムービー3本分、いかレスラー500人分、ミッキー・ロークのボクシング2000万試合分(=ミッキー・ロークのセックス2回分)は詰まっている。これでも分からなければ、ソースネクスト「打王」CMのムエタイキックが延々2時間続いていると想像してもらえればいいです。
なんでもスタント、ワイヤー、CGを一切使ってないとか。どう軽く見積もったって、撮影中にやられ役の大部屋俳優5人は天寿をまっとうしているはずだ。主人公もチャトラン方式で10人ぐらい用意してたんじゃないか? 相棒のジョージを桜金造中村ゆうじが交互に演じているのも納得。
なんだか今日は中野貴雄さながらの文体で恐縮することしきり。でもトリュフォーのマイ・フェイバリットが『大人は判ってくれない』であることは永遠に変わらないよ。