平熱38度。人はそれを高熱と呼ぶ

発端は友人Kの一言だった。
サンボマスターの新譜、前のアルバムに比べてオシャレになったよね。ホーンセクションやシンセも入ってるし、ギターもほとんど2チャンネル鳴ってるし」
私は手元にある、まだ未聴の新譜を驚愕の眼差しで見つめた。チンカス臭漂うロックだと思っていたら、いつの間にオシャレサウンドに!? 聞く勇気を殺がれた私は、急遽友人に情報収集を開始。すると”サンボマスター=オシャレ”説を固める噂が続々と流れてきたのである。
「今回のアルバムはロンドンレコーディング」「全曲英語で、一曲は野宮マキとデュエットしている」「プロデューサーはクインシー・ジョーンズ」「ツアーファイナルのAXではbabyfaceと共演予定」「次号『Smart』の表紙も決定」
「ジャケットの写真を撮影したのは常盤響」「橋本徹が『free soul』に収録すると発言」「小西康陽のホームページでRemix中と書かれていた」
「ライナーノーツを小泉今日子が書いて、渡辺満里奈も絶賛」「ユーミンが絡もうと必死」「ボーカルの山口は夜な夜なNigoと飲み歩いている」「食わず嫌い王で木梨と阿吽の呼吸」「リズム隊は元Bridge」「3人が知り合ったのはソムリエスクール」
「ベランダでハーブを栽培するのが趣味」「いつも首からパスをぶらさげている」「今ハマっているのはダーツ(的は消防庁のポスター)」「寿司屋に入った第一声が「わたし、カッパ巻き」」「自然体な生き方に憧れる」「『SEX AND THE CITY』見てたら感情移入して泣いちゃった」
「山口はだてメガネ」なんだこれ。最後だけ、ない話でもないじゃないか。もしそうだとしたらファンは激減するだろう。あの眼鏡は指紋べったりで、正月に年賀状が届く駅前の眼鏡屋で買われるべきものだから。