第12回東西落語研鑽会(よみうりホール)

笑福亭鶴瓶古典落語を見に行くと、披露したのは”私落語”と称する「青木先生」だった。これがもう絶品。
フリートークが随筆で、新作落語が中間小説なら、鶴瓶の高校時代を落語に昇華したこのネタは青春小説を超えて童貞文学の域に突入している。まるで村上龍『69』のような青臭さと莫迦々々しさ。このネタひとつで芸人生命がくっきり延びそうな名作だ。
また卒業式が近づく日々が舞台の「青木先生」と歩を並べるかのように、くしくもこの会は林家こぶ平こぶ平卒業式でもあった。そして初めて見るこぶ平の落語「一文笛」はといえば、ごく普通。専修大学あたりに進学を決めた、優等生でもヤンキーでも落ちこぼれでもない生徒の卒業式ぐらいに普通。もしこのまま人情噺に特化するなら、それは進学ではなく笑いの世界から留学していくような気がしないでもない。