三浦半島を出よ。そして猿島へ渡れ

スタジオパークからこんにちは」で、現場焼けした主任補佐がやたらちやほやされているので怪訝に思っていると、よく見たら新刊『半島を出よ』の宣伝に現れた村上ドラゴン龍だった。
村上ドラゴンスープレックス龍。この10年まともに新作を読んでいないとはいえ、私が高校生時代に夢中になった作家である。『長崎オランダ村』『オーディション』『恋はいつも未知なもの』……うわ、とんでもでべそなノベルばかり思い出してしまった。しかし『69』や『テニスボーイの憂鬱』が毎年読み返す名作であることは変わりない。
そんな高校時代に『トパーズ』を読んではチムコドラゴンになった過去を懐かしんでいると、男性司会者が作品の誤った解釈を述べて、村上ドランクドラゴン龍にシメられているではないか。間の悪い男だと一瞥すると、そこでバツの悪そうな表情を浮かべているのは高校の同級生・後藤理だった。
後藤がなぜここに!? NHKアナウンサーになって地方から東京に戻ってきたとは聞いていたが、まさか昼の帯番組の司会をしていたとは。こんなビッグになりやがって。これ前回使ったフレーズですか。そんなことより大丈夫か仕切れるのか後藤。いつも髪ボサボサで薄い口髭を生やしていた後藤。文化祭の打ち上げ飲み会でみんな高校生とバレないように大人びた服を着てきたのに、ひとりだけ詰襟を着てきた後藤。走り高跳びでバーに股間神社のお稲荷さんをぶつけて救急車で運ばれた後藤。ああ、それは卓球部で後藤のライバルだったKだ。その喫煙癖からプレハブで小火があった時、真っ先に疑われたK。進学校だったのにかかわらず卒業後の進路希望がパチプロだったK。ここで全然関係ない話を挟ませてもらいます。小菅という名字をKSGと表記すると諜報機関に見えるよね。
そんなわけで気がつくと私の関心は村上ドランクドラゴン(おもに塚地)龍から、だいじょうぶじゃないマイフレンド・後藤へと移っていた。昔から肝心なところでヘタをうつタイプなので、いつ粗相をするかと思うと目が離せない。だが不安をよそに番組は大きな破綻を迎えないまま中盤に。私の手の甲ににじんでいた汗が消えた頃、メインキャスターの渡邊あゆみアナが、『寂しい国の殺人』の文章をひきあいに村上タイガー&ドランク&ドラゴン(おもに塚地)龍に質問をぶつけた。
渡邊「近代化に従ってもう国家的な目標はなくなったと。だから村上さんは読者に対して……」
それを制して『13歳のハローワーク』を掲げた後藤「いや、この作品でもですね、職業を考える時に、そういう共通したものがなくなってる提示だったのかなと思いまして。だからそのー(失速)……ま、何て言うんですか(凍死寸前)……今の若い人に向けて村上さんなりのメッセージがあるんじゃないかと思ったんですよね」
出た! 出たよわざわざ先輩アナを遮ったにかかわらず結局は同じ内容の質問が! 次のコーナーで後藤の姿が消えていたのは、ただ構成の都合だったと思いたい。それより明日もスタジオパークの入園証が発行されるのか不安だ。とにかくスタジオパークの砂場を使った走り幅跳びでは、股間を強打しないように気をつけろK。