絹9(しもきた空間リバティ)

本間しげる見たさにしもきた空間リバティへ。演劇〜演芸の中間を狙う芝居仕立ての演者が売りの興業なのに、最初の2組が「ドラえもん声優変更ネタ」という深みゼロのテーマでかぶっていきなりリバティが全開に。はたしてトリ前に登場した本間は地方政治家の泥臭い選挙演説ネタ。人物描写より時事ネタに明け暮れ、初見の客まで飲み込めなかった印象でファンとしてはちょっと残念。
それよりこの興業、妙に懐かしい空気が漂うのである。狭い会場、舞台にあがる演劇くずれ、社会人が多い客層、ダメじゃん小出によるテレビを目指していない皇室ネタ、明日図鑑というユニットにさりげなく紛れ込んでいるオアシズ大久保。それは90年代初頭のボキャブラ前夜、芸人が細々と活動していたお笑いライブの光景だ。
そしてTHE GEESEというコンビはプロット重視のコントにくわえて、スーツ姿に意味不明な横文字芸名と完全に90年代初頭からの使者。初頭だけど存在はど真ん中。笑い自体は決して今とずれていないし一見こぎれいな装いなのだが、よく観察すると背の高い方の横顔が旧石器人と見紛う骨格をしている。つまり現代的なコントを古い骨盤が過去に引き寄せて、結果、中間にある90年代の臭いを振り撒いているのだろう。彼が頭蓋骨を矯正すれば、より時代に合致した芸人になるに違いない。お洒落なコントの先鋭・Z-BEAM(ズ・ビーム)ぐらいに。