本間しげるLIVE(ロックスタジオ)

本間しげるの単独は「蚊帳の中の老婆」「お見合いパーティの女」「喫茶店で朝礼するIT起業家」など5本。どれもそれなりの水準で”優れたキャラクター造形””緻密な演技力””底意地悪いギャグ”という本間の構成要素を改めて組み立てたような舞台だった。
しかし昔の本間は解体した要素をもう一度組みなおすと、パズルのピースが余るどころか、パズルが2個出来てしまう程に、熱量・完成度・笑いの到達点、全てにおいて”高い”芝居を演じていたのである。それを知る者としてはやはり物足りない出来。私の時計は相変わらず94年のライブ「売る魂」で止まっている。進まない針が刻む音は、壊れて同じ旋律ばかり奏でるオルゴールのようだ。
ところで前列を占める客層が視界に入って仕方ないのである。みんな一様にラグビー部あがりの体型で髪が短く若干ヒゲを生やしてポロシャツにハーフパンツ着用という、まったくもって同じ染色体同士が見つめあう視線と視線のレイザービームで導きあってる気配。前回の横浜公演でも見かけたが、またお目にかかるとは。舞台も客席も再現しなくていいことばかりが輪廻している。