週刊誌に書いてあることは東スポの「街頭淫タビュー」を抜かして全部嘘だぜ!

岡村靖幸覚醒剤で逮捕された。白い粉がWhite courageに映ったのか。それも再犯である。岡村のライブで言うところの、間奏中のブレイク「ツータイム!」だ。
今だから告白すると2年前の春、私はとある筋から情報を得て岡村の裁判を傍聴した。復活を願って、あそこで見た光景は墓場まで持っていくつもりだったのに。あの時の岡村は顔が限りなく土に近い色に染まり、私と被告席を隔てる距離はわずか10メートル。最低最悪のシークレットライブだった。差し障りがあるかもしれないので、あれは夢だったことにしておこう。
今ぼんやりと2003年のライブDVDを眺めている。『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』で、ギターをかき鳴らす巨躯は、序二段のような髪型も重なってウクレレを奏でるKONISHIKIのようだ。岡村がリミックスした『ストロベリーチップス』じゃないけれど、派手なハートブレイクに涙こらえておどけそう。曲がる順序を間違えた岡村よ、本当に欲しいものはそれだったのか。再び姿を現す祈りをこめて、昔書いた文章を捧げます。

岡村靖幸トリビュート作品「祈りの季節」
「雪が激しくなってきたなあ。岡村、さっきの道は正しかったのか?」
「曲がる順序を間違えて」
「やはりそうか・・・まずいな俺たち遭難してしまったみたいだぞ!」
「まるで責めてるみたいだ。動機が不純な僕を」
「わざと間違えたのかよ! しかし登山にしてはおまえ軽装すぎやしないか?」
「赤のブーツとやけにすれすれのミニ」
「そんな格好で山登るなよ! 死ぬぞ!」
「始めようよ二人はもう全裸」
「いつの間に? 寒―ッ! って雪山を裸で登る訳ないだろ!」
「やっぱ俺はやっぱ裸がカッコいい人がカッコいいと思うよ」
「おまえ何言ってるんだ? まあいい。実はな、俺は両親を雪山の遭難で亡くしていてな……」
「シュクドンツクボンボーン」
「人の話を聞けよ! おお、そんなことをしてるうちに目の前にあばら屋を発見!」
「赤羽サンシャイン」
「どう見ても廃屋だろ! まあいい、中に入るぞ!
……ふう助かった。死ぬかと思ったー」
「どう僕の部屋? 一緒に暮らしたい?」
「どう考えてもおまえの家じゃないよ! 俺たちは遭難したんだよ!」
「ビデオとかファミコンとかあるし、何時だってコンビニエンスストアはやってるしね」
「そんなのどこにもないから。あばら屋の中にはムシロが一枚あるだけ」
「最新型のベッドだよ」
「すごい言いようだな! しかし参ったなあ」
「どうしようかなって迷ってちゃダメじゃんよ。オレとガンバろうぜ」
「そうだな。なんとかして助かる手段を考えないと……」
「今夜電話してこいよ。来年の作戦考えようぜ」
「今この瞬間の作戦を考えるんだよ! それに今夜電話って……あ、おまえ携帯電話持ってるのか! それになんだいきなり通話まで始めて」
「電話なんかやめてさ六本木で会おうよ」
「おいおい。誰と話してるんだ?」
「汗まみれのスター」
「なんかすごいな! しかしここ電波届くのか? まあそれはさておき腹が減ったな。岡村、なんか食料あるか?」
「持ちかえりのジャンクフードとパック入りの烏龍茶」
「よし、それ食べよう」
「おいしかったよ特別のサンドイッチ」
「もう食べちゃったのかよデブちん! ああ眠くなってきた。なにかをして気を紛らわさないと」
「そんなに話したことないじゃん。僕と」
「そうだなあ、話でもするか。俺たち、同じ山岳サークルなのにお互いのことよく知らないし。岡村って齢はいくつなの?」
「たぶん23歳」
「たぶん? 仕事は?」
「職場はディスコで」
「水商売か」
「遅番のウェイトレス」
「なぜウェイトレス? 趣味は?」
「せつない夜は屋上にのぼって風に訊ねてるんだ」
「イタい趣味だなあ」
「子供の頃から上達するため練習中だい」
「そんなのに上達や練習があるのか? じゃあ次は俺が語る番だな。まず俺の趣味は」
「僕に話してよ今すぐ話してよ僕に話してよ」
「おお、そんなに聞きたいのか? 俺の趣味はね、人間観察」
「Oh!バカげた趣味だな!」
「おまえに言われたくないよ!」
「あなたの生き方ダイッ嫌いだよ」
「そこまで言うか! あとギター弾くのが趣味かな。エレキね」
「友達は君のこと不良だと決めつけている」
「エレキで不良っていつの時代だよ!」
「来週には裁かれてるはずだぜ」
「ロックで裁かれるなんて文革の中国か、ここは! ところで岡村、助かったら何したい?」
「星空の下ですべり台のぼりたい。今晩はそうしたい」
「おまえはアホか?」
「もうごめんさ毎年あんな夜はイヤだ」
「どっちなんだよ! しかも毎年やってるのか? 俺はね、助かったら息子を抱きしめたいな」
「本当に欲しいものはそれなの?」
「おまえに言われたくないよ!」
「あなたの生き方ダイッ嫌いだよ」
「しつこいな!」
「プーシャカラカプーシャカラカプー」
「もう何言ってるか分からないから。それにしてもだんだん寒くなってきたなあ」
「ベランダ立って胸を張れ」
「死んじゃうよ! あれ? ドアをノックする音が聞こえないか?
……救助隊だ!助かったぞ、岡村!」
「窓の外からパパとママが手を振ってる」
「って俺たち死んでたのか! ギャフン!」