タックルすると見せかけてスライディング土下座

有明コロシアムでHERO`Sを観戦。また所英男のことが好きになる。
さてTVがからんだ格闘技の興行では、試合前に各選手のプロフィールを紹介するアオリVTRが流れるのが常だ。哲学書を読みふけるトリックスター須藤元気とか、一大会でローブローが2回入るチムコデカ男・宇野薫とか。そしてTBSがキャラづけに困るとすぐ使う常套手段が「この男が闘うのには理由があった−−それは家族のため」なのだった。父が最近死んだ、身重の妻がいる等々。私の記憶が確かならば、K-1MAXなんて8選手中6人がこれ。最近、世界SASUKE連盟総裁兼、元祖ニートの山田勝巳が家族を担ぎ出しているのも無縁ではないだろう。
だが”家族のため”なんて格闘技にかかわらず、何でも誰でも使えるではないか。「サラリーマンの甘木何夫が上司に頭を下げるのは理由があったーーそれは家族のため」「主婦の甘木何美が台所でテンプラを揚げるのには理由があったーーそれは家族のため」「子供の甘木何也が金属バットを持って両親の寝床を襲撃するのは理由があったーーそれは家族のため」
今回はリトアニアの闘神・レミギウスがこの手口の犠牲に。「この男がもっとも大切にしている人が祖母のワンダさんである。生後すぐ両親と離れ離れになって祖母に育てられたレミギウス。しかし今、その祖母は骨が脆くなる病気で歩くこともままならない(映像では杖をついて普通に歩いている)。そしてレミギウスは稼いだファイトマネーで祖母の医療費を捻出しているのだった(近所の内科に処方されたような薬を2,3錠飲む、緊張感に欠けた映像)!レミギウスは祖母に勝利を誓う!」
横にいた友人Iが呟いた「これ、ただの老衰じゃねえか」の言葉に、私は小さく頷いた。