アマゾンの1-Clickを押すと、遠い島で核ミサイルが1機発射

横田増生アマゾン・ドット・コムの光と影』を読む。元業界記者がアマゾンの物流センターにアルバイトとして潜り込み、完全秘密主義のアマゾンの実態を探るルポルタージュ
といっても最終的にはアマゾン・ジャパンの正確な年間売上も、送料無料の仕組みもはっきりとは分からず、寸止めで話は終わるのである。濃厚な霧に包まれた山頂を目の前にして、これ以上は危険だからと躊躇せずに引き返すような及び腰。しかしこれはこれで面白いのだった。山の外郭は把握できるし、その先を越えるととんでもないことが起こるであろうという不穏さがビシビシと伝わるから。何よりも著者は自分の足で八合目まで登っているのである。
それと並行して高田延彦を詳しく知るために読んでいたのが、金子達仁の『泣き虫』。300ページも関心なさそうに筆を進めているのに、最後のあとがきになると「俺はいかに忙しいか」「こんな業界関係者と知り合いだよ」と途端に躍動し始める金子先生の筆。筆ペン。わりばしペン。こっちはさしずめヘリコプターで山頂に舞い降り、5分後に離陸して「制覇した」と言い張るような王様ワーク。もう感服するしか手段はない。誰か空中5000メートルから先生の大好きなピッチに落としてやれよ。パラシュートを背負う代わりに、CMで中田と前園が空中落下中に嬉々とした表情を浮かべていた「ラ王」だけ持たせて。