戦う君の歌を、戦いすぎて壊れた格闘家が笑うだろう。ファイト!

「週刊ファイト」元編集長の井上義啓氏が亡くなった。
私が「週刊ファイト」を読み出したのは遅きに遅すぎる1年半前。プロレス勃起不全に陥っていた私に精力を注入してくれた久々の活字プロレスだった。毎週発売日になると食い入るように読み込み、で、今年9月に40年近く続いた雑誌は休刊。30過ぎて童貞捨てた男が毎日風俗に通いこんでその1年後チムコがスポーンと抜けたような解脱感である。だがプロレスにやさぐれた私を夢中にするほど、I元編集長が書き殴る至言は面白かったのだ。
なんとなく捨てられないでいた「週刊ファイト」最終号(読み終わった後、躊躇せずに捨てられるのもこの雑誌のいいところだ)の一面には、「猪木死すともプロレスは死せず」「プロレスの面白さダイゴ味は猪木プロレス全盛にあった」の見出しがある。私はこの”猪木”を”井上”に置き換えた言葉をI編集長に捧げたい。私はI編集長の言説から「プロレスは底が丸見えの底なし沼」であり、その水面に広がる波紋の文様に目を凝らすことがライターの仕事であることを学んだ。同時にたとえ波紋がなくとも「見た」と信じきることも。合掌。