右のスピーカーから三沢の声、左の声から天龍の声が流れるサラウンドシステム

お誘いをいただいて武道館にNOAHを見に行く。メインのGHCヘビー選手権は三沢光晴vs佐野巧真(!!)で、試合はお互いの技術とキャリアとメタボリックをフル回転。三沢は”プロレスラー”というより完全に”社長”の動きをしていた。体をぶつける二人の姿は、もはや戦いではなくアフターゴルフの風呂で体を流し合う光景に。三沢が社長ならその首を狙う佐野には政権転覆を企てる幹部のギラつきがあってよいはずなのだが、佐野は飼いならされた総会屋のように手数の多さに反比例して心は大人しく、メインマッチをシャンシャンで終わらせることに腐心していた。つまりこの日たくさんブチこんだソバットはNOAH株主総会における想定内の質問だったのだ。でも質疑応答のシートが準備されてるのにかかわらず、三沢は言葉が出てこずに回答に詰まっている。どうすんのよNOAH。
興行で一番輝いていたのは満場一致の杉浦貴。張って張られてドツいて倒されては這って、何度も立ち上がるあの姿勢。あれを見て観客の中に湧き上がる感情こそが瀕死のプロレスに残された最後の核なのだと思う。ボロボロになるまで闘った杉浦には、試合後、レスラーらしく好物のキャバクラに直行して水割り片手にガハハ笑っていてほしいものだ。ポジションが上がっても気持ちは万年平社員。自分の会社の株価も知りません。