ホリプロお笑いライブ vol.170(新宿安田生命ホール)

誘われて久しぶりにホリプロライブへ。デビュー当時、舞台で素人そのまんまの顔をさらしていたKICK☆がいつの間にかムエタイスタイルを確立していた。KICKを名乗りながらもチャランボ、テンカオの足技を使わないフェイント戦法に感心していると、会場もなかなかのウケ具合。やはりブアカーオ・ポープラムックやガオグライ・ゲーンノラシングの活躍以降、ムエタイの認知も広がったものだと頷いていたら、隣席の知人から「『エンタの神様』に出てるんだよ」と指摘された。なにー。
『エンタの神様』が弊害を与えているのは何もテレビの前の子供たちだけではない。劇場で売れずにもがく若手は時折方向性のなさがハレーションを起こして、科学では解明できない光を放つことがある。そんな若手たちに「もしかしたら『エンタ』が拾ってくれるかも」といういらぬ幻想を与えて、体内に眠る発光体を奪ってしまったのだ。私にはそれが一線を越えてしまった臓器提供にしか見えない。もうKICK☆は”フジテレビを辞めて芸人に転向した男がなぜかムエタイに活路を見出そうとしている”面白さを失ったのである。欲しくないかそんなの。
なおKICK☆の師匠格に当たる末高斗夢は後半戦に登場し、限りなく勝算の薄そうなイエスイエス・ダンスを披露。ネタの最中に「前回のライブで使った”阿波踊り漫談”を『エンタ』のオーディションに持っていたら即効落とされた」とカミングアウトしていた。末高斗夢の中にはくすぶった芸人だけが持つ発光体が埋まっている。だから欲しくないってそんなの。