第6回漫才新人大賞(国立演芸場)

前から気になっていた社団法人漫才協会主催の漫才新人大賞。寄席芸人の若手が漫才の腕を競う場を見て何か感じるものはあるだろうか? とおそるおそる足を運ぶと、入り口で本日のプログラムを渡された。開いてみれば出場芸人と演目が記されている。
『どんだけぇ〜』・・・・・・りぼん
『いい加減にしろ』・・・・・・ざっくばらん
『結婚とはなんぞやー?』・・・・・・ホンキートンク
『まさかそんなところで』・・・・・・Wコロン
『ダイエット』・・・・・・タボン
『コノヤローこの野郎腹の立つ事』・・・・・・マシンガンズ
『子供』・・・・・・青春ダーツ
『やだねぇ』・・・・・・風藤松原
『   』(未記載)・・・・・・きぬがさ
『   』(未記載)・・・・・・イタリアじ〜ん
『嫁姑』・・・・・・ニッチェ
よかった。来てよかった。事前にネタの中身がほぼ予測できるこの安心感、最近殺伐さが増していくお笑いライブに一番欠けていた感情ではないか。開演すると司会の大空遊平・かほりが「抜けてる演目の部分は、きぬがさが『自動車教習所』、イタリアじ〜んが『ニッポンのよいところ』です」と補足。本当に来てよかった。
1組約8分というアバウトなルールの下、ネタが始まると会場に緊張感が張り詰め、審査員席の後ろにいた老人たちがチラシと舞台を交互に指差しながら、「今出てるのはあの芸人さんかい?」と小声とは言いがたい声で確認を始める。これで客全員に審査員票が配られるシステムなのだから、楽屋には客席の5万倍緊張感が流れていることだろう。
さて11組の漫才は全体の6割をライブのネタ見せ、2割を中野twlにいるような空気が流れる中、堺すすむ事務所所属のホンキートンクが寄席芸人の文体を身体に染込ませた漫才でばっちり笑いを奪い、納得の大賞受賞を果たした。あの手堅さ、きっと数年のうちに演芸界で「上野のチュートリアル」として売れるに違いない、と感心していると、ゲストとして第1回大賞受賞者のロケット団が登場。寄席芸人の文体どころか”言語”そのもののような漫才をしていて度肝を抜かれた。こちらも数年内に「上野広小路のチュートリアル」として売れるのは確実である。というかもう寄席じゃチュートリアル並みに売れてる。
そんなこんなでこの日、もっとも強く私の心を射抜いたのは審査員長の演芸評論家・花井伸夫がW毒舌コンビのマシンガンズを真顔で評した言葉だった。「君たちは面白いけど少し言葉が汚いよねえ……あと早口すぎる。それじゃ老人ホームで誰も笑わないよ!
最後に相当どうでもいい事ですが、風藤松原はネタがよくて普通にウケていたこと、姉妹漫才のりぼんが演目のわりに「どんだけ〜」を一切使わなかったことを報告しておきます。