世界のナベアツ 日本公演(ルミネtheよしもと)

ジャリズム解散前のように若くてフレッシュな狂気は影をひそめたものの、作家としての活躍や中年の円熟をヒリヒリ感じさせる、渡辺鐘ならではのひとつの事象を限界まで行き詰める頭のおかしい笑いが充実。字の造形ごとに読み方が変わる「正しい読み方」や、スマッシュヒットとなった「3の倍数と3のつく数字の時だけアホになります」シリーズの亜種進化系が面白かった、いや、OMOROー!(相方・山下による乾坤一擲のギャグ)だった。
そして世界のナベアツ・日本公演という大きいスケールに恥じないゲストとして、エンターテインメントの本場からハリウッドザコシショウが来訪し、代名詞であるアシュラマン漫談にくわえて、この日は全米を熱狂させたミスチル・桜井漫談も披露した。上半身裸の上にはおったシャツの両裾をブリーフから通す、桜井の模写としては比較的ベタな格好を選んだザコシショウは、両生類を思わせる重心の低い姿勢から「ヘイ! ヘイ!」と謎の節回しを連呼して舞台を徘徊すると、いきなりパーソンズの『Dear Friends』を熱唱。それは既に地上波放送していた『あらびき団』でも伝わっていたスゴさは4割弱と気づかされる慄然の奇行で、ナベアツに声援を送っていた客もほとんどが心にもない微苦笑で時をやり過ごしていた。私は笑ったが、他の客の気持もよく分かる。だってあの時、舞台にはただの異常者しかいなかったから。『あらびき団』によればハリウッドザコシショウとマッド・ギャグティストである村越周司が年末に合同ライブを予定しているらしいし、ここまできたら同時代に二人を産み落とした神を説教したい気分だ。
それはさておきこのライブ、次回は演劇界からヨーロッパ企画、音楽界からアジアンカンフージェネレーションを呼んで、みんなでTOTOの「アフリカ」を歌えばよりスケールアップが図れると思いました。