フキコシ・ソロ・アクト・ライブ「タイトル未定」(本多劇場)

現在の演芸界において、3の倍数に着目した世界のナベアツよりも、因数分解をネタにする大輪教授よりも、数学的美しさを感じさせる吹越満の単独公演。鏡と光の軌道を利用したオープニングは2次曲線の演算、汚れた部屋のアニメに合わせて踊ったバレエは立方体の分解図、1人40役を演じた芝居は暗記した円周率のようでただただ脱帽する。中でも息を飲んだのは揺れる鉄球を交わしながら演技に打ち込む「命を懸けた芝居」。どれだけ正確な計算をして精緻な図面を引いたのか!? と公文式出身の私は興奮を隠せなかったが、関係者によれば「公演の初日は鉄球に激突してたよ」とのこと。あれは数理ではなくて、力のこもったすげえ太い字で足し算のドリルを解いてただけでした。