浅草花月(雷5656会館)

リアル大師匠を取材するため浅草へ。そのからみで見せてもらった公演は、通常のライブではあまりお目にかかれない南海キャンディーズやアジアンがファミリー向けにチューンアップしたネタを披露するお得感のある内容。しかし子供からお年寄りまで全観客を圧倒し倒したのは、ゲストとして招聘された浅香光代の舞台だった。
まず暗転が明けると楽屋風のセットが現れ、なぜかその前で「TEAM浅香」と思しき俳優二人がチャンバラを展開。するとそこにバスタオル姿で真っ白な肌と胸の谷間をさらした浅香光代が登場して、いきなり客席に戦慄が走る。はたして俳優二人を舞台から追い出した浅香は、そこにいない社長への呼びかけをしながら化粧を始めるので、「ああ、これは”楽屋でボヤく女優のコント”なのかな?」と思いきや軽々とその予想を裏切って、客に向かって漫談風のトークをしたり、三味線を持ち出して本格的に一節うなったりするから設定はますます混沌をきわめ、しかもぶっきらぼうな早口なので話の半分が聞き取れないというダメ押し弾まで。全く舞台上で何が起きてるのか把握できないまま、おそらく私以外の観客も幾度となくずり落ちそうになるバスタオルに「こらえてくれ!」と念を送ることで集中力を維持していた。そして最後は唐突に力士姿で登場したTEAM浅香の俳優と剣劇を繰り広げて世紀の大団円。「こんな空気になるんだったら、最初から芝居やればよかったわねえ」の言葉を覆い隠すように、緞帳はするする下りていった。
たぶんこれを読んだ人は私が何を書いてるか理解できないだろう。書いてる私ですらいまだによく分からないのだから。もしかして私が見たのは舞台ではなくて、70年代に発表されたアメリカのカルトムービーなのかもしれない。なんにせよ、昼の浅草でこんなに興奮するとは思わなかった。ありがとう浅香光代。我々は浅香光代の存在を知っているが、彼女が何をしている人なのか、まだ何ひとつ知らない。