テンジャルマイル(草月ホール)

天津、ジャルジャル、スマイルという、どういう必然性のもと集合したのか読みきれない新旧baseよしもとの精鋭3組による全国ツアー。この日のメインを占めたコーナー企画になると、大阪吉本の若手らしい有機的なネットワークを形成するので会場には常時安心感が。特に天津・向の迅速な小ボケ生産力には目を瞠るものがあった。
しかしそのネットワークの網目からだだ漏れた男が一人。今、エロ詩吟で注目を浴びる天津・木村である。どこからどう見てもユニットの最年長者なのに、何を仕掛けるわけでもなく要所要所で流れをぶち壊し、場内に不安を6割含んだ爆笑を撒き散らしていった。意外に長身のジャルジャルに挟まれると萎縮してどんどん背が縮んでいくようで、そのか細いオーラは数年前に橋幸夫のモノマネでのし上がろうとしていた頃にそっくり。そろそろエロ詩吟ブームが落ち着いて、早くこっちの木村が帰って来てくれないなかと思う。
ところでイベント翌日に木村はエロ詩吟本を発売する模様で、配られたチラシを見たらなんと出版元が河出書房新社じゃないか! 企画の下世話ぶりからワニブックスであることを疑わなかったので本当に驚いた。あの『文藝』の河出だぞ。文藝賞で鈴木清剛とか、鹿島田真希とか、白岩玄とか、どうにも読む気がしない大型新人作家を次々と輩出し続ける河出がエロ詩吟とは! あわてて出版社のサイトを見たら、この夏からヤポンスキーやら島田秀平やらのタレント本を狂ったように発行していた。河出には転職してきた黒い編集者が、あると思います。