M-1グランプリ2008 敗者復活戦(大井競馬場)

「60組近い芸人の中から誰が抜けるんだろう?」の興味というより、「オードリーよりウケる芸人はいるのだろうか?」の疑問を確かめに、強風吹きすさぶ大井競馬場へ。無名からかなりの笑いをさらったマヂカルラブリー、ハライチの増収増益ぶりや、全神経と全体力を駆使した磁石のたたみかけにも心惹かれたけれど、観客の期待と最高のコンディションを一点集中させたオードリーは予想以上の核爆発を起こして、地鳴りを感じるほどウケていた。「M-1グランプリ2003」の笑い飯を思わせる瞬間最大風速に、観客は本当の風が吹いていることを忘れた。
それはそれとして敗者復活戦の楽しみといえば、いちかばちかの精神がそうさせるのか、どう考えても勝ち抜けるとは思えない徒手空拳で戦いを始めるキワモノ芸人の突発的出現である。2006年はひたすら「越冬つばめ」をリフレインしたカリカ、2007年はワンマンショーをツッコミの加藤が展開し全観客を置き去りにしたジパング上陸作戦が心に残る中、今年、私を唸らせてくれたのがパブア。という新人だ。「番組をよく見たことないけど『エンタの神様』で見たことあるんじゃないか?」と複雑な既視感を覚えるチャラ男キャラ+リズム押しの展開に、客席は「この場でそれを? まさか?」とざわめくが、その後に繰り出されたのが「このネタ、もう飽きたでしょ?」「M-1は一回戦で落ちると思っていました」という、ある意味、エンタ教の神様が降臨したような内輪&自虐ネタ。その地雷原を直進する強行突破ぶりに会場は虚をついた笑いに包まれ、まさかの生還を果たすのであった。カリカが「混沌」、ジパングが「迷走」とするなら、パブア。は「記念受験」の新境地で私の心にその名前を刻んだ。さー、これで来年のM-1からもますます目が離せなくなったぜ!(たぶん敗者復活戦しか行かない)