さくらんぼブービー 10周年記念単独ライブ「ギロチン」(シアターミラクル)

開演時間から待つこと十数分、ようやくさくらんぼブービーが登場すると、痺れを切らした最前列の客が「遅いぞこの野郎!」と大声で騒ぎ始める。すると鍛冶はおもむろにピストルを取り出して射殺。さらに「おまえらも笑わないとこうなるぞ!」と会場の客に一喝し、強制的に笑いを獲得するコペクルニクス的転換によって、開始早々ライブの成功を掌中に収めた。その後展開された普段より長めのコントは、いつもに比べると暴力性・不条理性に欠けて、ほんのりと失速した印象を受けたが、笑わないと葬られる危険があるため、なんでもかんでも笑っておいた。
舞台の端にはさくらんぼブービー自身が数日がかりで作ったという完成度の高いギロチンが設置され、コントの間に登場するラウンドガールがどんどん薄着になる趣向も。それでいて1時間ちょっとのライブ終盤になると、「こんなに早く終わるとまた怒られるよ!」と慌ててコントの引き伸ばしをリアルに敢行する。そのサービス精神があるのかないのか分からない行動を眺めていると、さくらんぼブービーに対して「どこでこんなネタ思いつくのだろう?」の疑問以上に、「一体どういうモチベーションで舞台上がっているのだろう?」の疑問がみるみるふくらみ始めた。コントの中も外も不条理だ。