ザ・失投パレード NO・8(ムーブ町屋ハイビジョンルーム)

私も原稿を書いている「Quick Japan」に、演芸会を主催するヂエームス槇さんが「私の注目する芸人」を連載している。そのマイナー芸人に対する過剰な偏愛にまみれた文章を愛読していたところ、このたび名前を「ルガンガ便一」を名前を変え、あまつさえ襲名披露興行があるとの噂を聞いた。面識こそないが、同業者としてルガンガさんがスベったらいつでもつけこんでやりたい気持ちは拭えない。早速、懐にマイクを、肩にラジカセをしのばせて、disる気まんまんで町屋へ向かう。
昨年の春、「SUPER LEAGUE2008」という戦慄のお笑いイベントを見たスタジオには30人弱の客が集結。当日券500円を払うと、チケット代わりなのか、おいしそうなマドレーヌを渡された。やがてライブが始まり、まずは主催者である漫画家のバトルロイヤル風間氏がせりでた腹を叩きながらリズムを取って、「宇宙戦艦ヤマト」の替え歌テーマソングの歌唱を全員に強要。観客は教会で賛美歌を歌うような従順さでそれに従った。その後、ネタの合間に現れた風間氏は打ち上げに参加する人数を確認し、マドレーヌを作ったケーキ屋さんが客席で携帯を鳴らしたり、途中でコントを披露した女性コンビの一人が前回のライブでは観客だったとの情報を耳にする。この演者と観客の境界線がかぎりなく薄いライブ、要は打ち上げのビールを美味しく飲むための前戯のようだ。
さてトリにはお目当てのルガンガ便一が登場。落ち着いて客席を見回すと「「レッド・クリフ」に興奮した若旦那が店の二階で三国志を再現する」という新作落語を始めた。どういうわけか口跡がしっかりしていて、それどころか話も別格で面白い。向上心のない新作落語家なら十分勝てる内容を間の当たりにして、私はマイクを隠し、ラジカセを窓の外に投げ捨てた。このままだとつけいるスキが見つからないので、次回は打ち上げが行われている養老の滝に潜入し、養老ビールと尿をすりかえようと思ってます。でもキンキンに冷やしたら区別がつかないかもしれない。