RGvsハブ〜ジャッジ熊谷〜上海頂上決戦上映会(ロフトプラスワン)

胸に銀メダルが輝いていた。しかし、彼女の表情は曇っていた。
バンクーバー冬季五輪のフィギュアスケート女子フリー。トリプルアクセルを2回決めながらも優勝を逃した浅田真央の胸には何が去来していたのだろうか。それはある女性の人影だったに違いない。
金妍兒――
同じ1990年に生まれた二人は、この6年間、氷上の競技で鎬を削ってきた。ある時は浅田が勝利をつかみ、ある時は金に軍配が上がり、二人のライバルストーリーは糾える縄の如く展開していった。しかし冬季五輪で敗北を認め涙を浮かべる浅田の姿を見て、われわれはひとつの疑問を感じずにはいられない。
なぜ神は同じ時代に二人の天才を産み落としたのか?
振り返れば大山康晴升田幸三田中角栄福田赳夫アントニオ猪木ジャイアント馬場ケンシロウラオウ魁皇千代大海緒方耕一石井琢朗(史上最高レベルの盗塁王争い)、東と深沢・・・憎き“奴”さえいなければもっと簡単に天下を取り、わが世を謳歌できたことは誰しも分かっている。しかし残酷ながら現実は違う。幸か不幸か、好敵手は同時代の空気を吸い、お互いの動向を虎視眈々と睥睨しているのだ。
それはお笑いも例外ではない。21世紀を代表する二人の芸人が確かに存在し、あまつさえ、その雌雄を公衆の面前で決しようとしている。
その闘いこそが「RGvsハブ」である。
片や関西から徒手空拳で上京し、ありとあらゆる窮地に立たされるも、不屈のバンプ精神で全ての困難を跳ね除けていった西の天才・レイザーラモンRG。片やデビュー幾歳月、スポットも当たらず後輩に踏み台にされてきたが、えげつない柔軟性とどす黒い狂気を武器にのしあがってきた東のカリスマ・Bコース・ハブ。そんな二人による「どちらが面白いか」の白黒をつける抗争は、渋谷を混乱に陥れ、嬬恋村を壊滅し、そしてついに海を渡った。その地とは亜細亜の竜こと中国の心臓部・上海。決戦の模様は奇跡的に映像に記録され、くしくも氷上決戦の翌日、新宿ロフトプラスワンにおいてオールナイト上映されることとなった。
業界を代表する「RGvsハブ」ウォッチャーである私がこれを見逃す理由がない。当然、深夜の新宿へ向かった。と見せかけて、翌日に東京マラソンに参加するという最高にしょっぱい理由で、炭水化物を十二分に摂った後、9時半に就寝する。
ラソン当日、せめてもの罪滅ぼしと思って、『ケンドーコバヤシのテメオコ』で披露された「RGのあるあるベストヒット」を聞きながら走っていたら、途中、イヤホンの片方が聞こえなくなるトラブルに遭遇。一旦あきらめて、数十分後に音楽を再生したら元に戻っていた。あれは何だったんだろう。もしかするとスタート地点で手を振っていた偉いさんに向かって、「おまえの小説を褒めてるの、見城徹だけだぞ!」と叫んだ罰が当たったのかもしれない。