広大vs玉城〜楽屋芸王者決定戦〜(シアターD)

こりゃめでてーな・広大vsセブンbyセブン・玉城――
東京吉本若手の地下系ライブに姿を現しては、常に狭くて偏った新作モノマネをぶっこむ二人がついに雌雄を決する時が来た。吉本アングラ界のカリスマライブ「RGvsハブ」が文字通り裸の体をぶつけあう愚直なヘビー級タイトルマッチであるなら、広大と玉城の勝負はキレとテクニックで鎬を削るジュニアヘビー級選手権である。という表現はキレイすぎで、実際のところは二人が交わることで放たれる核エネルギーを、観客席に居座る芸人たちがひたすら爆笑して原子力保安委のように丸飲みするため、エネルギーが無秩序に増殖。それをシアターDと観客が格納容器になって外に漏らさないように注視するイベントである。
さて対決の流れなんてあってないようなもので、玉城が得意の安西先生大勝軒山岸一雄はもちろん、大江裕塚田真希、サモハンキンポー、『銀と金』の森田、楽屋に入ってきたダイノジ・大地、同期の劇場作家・フジサワ、早稲田大学のコンパが終わった後で所在なくしている学生でラッシュすれば、広大がまだ2回しかアニメ放送していないトリコ、北条司先生、クラブで後輩を牽制するイシバシハザマ・硲、放送作家の太平カンフー、学生時代に教わったイトウノブコ先生で応戦。さらにBBマスオなる、BBゴローによる稲川淳二のモノマネにマスオさんを挟み込むという、マジメに説明している私が損してる気分になるようなトリッキーの上にトリッキーを塗りたくったキャラで漫談したかと思えば、その後、桑田佳祐松山千春郷ひろみまで平気な顔してモノマネしていた。
そんな二人のモノマネは一瞬すごい熱を発するが、楽屋の敷居を一歩踏み越えた途端、扱いに困る使用済み核燃料になりそうな気配が充満。ただしベガ(玉城)とロバート・ガルシア(広大)による夢のシューティング対決と、玉城扮する『ONE PIECE』の黒ひげが、居合わせた芸人に対してヤミヤミの実の能力を駆使し、「学芸大学のBARで打ち解けた女子とコトに及ぼうとしたらビンタされた」「住まいは練馬なのにライブが終わると田園都市線で帰っていく」「初めて行った風俗が『エデンの園』という外人専門店」など、芸人の暗黒ゴシップをぐんぐん引き出す芸にかぎっては、全国的に飛散していきそうだ。
そして最後、お気に入りのキャラによる漫才対決が行われると、Mr.インクレディブル(玉城)と『仁』に出ていた桐谷健太(広大)が、稽古量が十分にうかがえる漫才でぶつかりあって、2時間かけて「器用だから金になるわけではない」ことを体現したイベントはメルトダウン。振り返れば、二人が着替えてる間、いちいちネタをやらされて舞台をつないでいたジャングルポケットが誰よりも輝いていた。ジャングルポケット・武山に至っては、各方面から襲い掛かる無茶ぶりをクリアして、イベント中に少し成長までしていた。どういうつもりだ。