東京吉本若手漫才協会本公演〜昔話編〜

東京吉本若手漫才協会とは、私の勝手な想像によれば、M-1終了後、気がつけば必要以上に漫才のレベルが上がってしまった若手芸人たちのエネルギーをかき集めて、あわよくば金に変換させようと目論むロシアンモンキー中須が設立したまではよかったが、立ち上げ公演でトリを務めた自らがスベるという国も想定外の大事故が起こり、今、会長と副会長を務めるロシアンモンキーが火消しに奔走している団体だ。
その第2回公演に足を運ぶとお題の「昔話」を各コンビが消化し、タモンズやトンファーが進境著しい仕上がりに。そして終盤、囲碁将棋、天狗がふんだんにウケた後、トリのロシアンモンキーがいつものたっぷりした足取りで登場すると、客席の「今日は前回の分も笑わせてくれるんでしょ!?」という期待が一気に高まる。
はたしてロシアンモンキーの漫才は、時々、「あれ? 北沢タウンホールって深海にあったっけ?」と錯覚する深くて暗い静寂が劇場を包み込むや、二人の声がみるみる小さくなり、最後はどういう流れか全く思い出せないけれど、子供の学費が払えないため教師に抱かれる母親が告白するという「週刊新潮」で1000回は読んだ記事のような話になって、さらにどういう流れか全く思い出せないけれど、中須が浦島太郎をアレンジした「裏スジ太郎」のキーワードを言い放って漫才は見事にメルトダウン。近くの席に座っていた女の子が、漫才中に少なくともメールを2回送信していた。結論から言うと、血の味がするスベり方をしていた。
さて前回のエンディングでは、役職の放つ圧力からロシアンモンキーがスベった事実が不問にされたが、今回は協会所属芸人たちがふがいない舞台をいっせいに追求。すると会長と副会長は二人揃って「最初から客が笑わないでおこうという空気だった」「客席から目に向けてレーザーが放たれた」「最前列の客がオチを強要した」など巧みな弁舌で批判をかわし、川口に至っては「今日MCしかしてへん」「他の記憶がない」と私の父親が脳梗塞で倒れた時そっくりのコメントを残す。どうも漫才協会のテーマが「若手が尺の長い漫才をモノにしていく」から、「その実力を問題視される会長が、政治力でのらりくらり交わしていくダイナミズムを楽しむ」という往年のアントニオ猪木的鑑賞法に変わりつつある気がしてならない。