中津川弦・カヨコの結婚報告演芸会(浅草東洋館)

面識のない中津川弦氏から「以前ブログに取り上げていただき、ありがとうございました。このたび結婚をする事になり「結婚報告演芸会」なる催しを行うので、ご都合が合いましたらご招待いたします」という内容の丁重なメールをいただく。どうもありがたいことに、氏は私のことをメディアに顔を出して演芸を論じる御用学者と勘違いしているらしい。もちろん事実を告げることなく、引き出物を期待して浅草へ向かう。
ライブは通常の披露宴同様、新郎の風俗体験暴露話を基調に、新郎新婦ゆかりの芸人がネタを披露していく温かい会合に。中でも圧巻だったのは、最後、新婦のカヨコさん(素人)が両親に向けて読み上げた手紙で、これが家族の機微あり、予想を裏切る展開あり、感動の締めありの向田邦子エッセイのような完成度で、どうにも感動を禁じえないのだった。目を舞台に向ければ芸人も瞳を潤ませている。ニッチェが涙を拭っている。さっき「公開セックス」コールを呼びかけて会場をドン引きさせたナイツ・塙が半べそをかいてる(あんなにスベるナイツを見ることは今後ないだろう)。そしてまさか、浅草寺に届きそうな声量で国体護持&八紘一宇を訴えていた右翼漫談家大本営八俵の瞳まで赤く染まっている。両親への手紙でカヨコさんが皇室という告白はなかったのに一体どういうことだろうか。
ところで個人的に最高だったのは、客の空気をいっさい感知せずに使い込んで黒光りのする漫談を好きなタイミングでねじこみ、客の感性が麻痺した頃あいに十八番の物真似を突きつけてきた、鯉川のぼる師匠である。若手にはほぼ皆無の、馬力で全てを突破する芸を久しぶりに見た。鯉川のぼる師匠は新郎・中津川弦の師匠でもあるので、新婦の挨拶にさぞ涙してるのだろうと探したら、客席にいる芸人やタニマチに舞台上からひたすら目配せしていた。中津川弦さん、カヨコさん、結婚おめでとうございます。