サンボの指南書『USSRカニバサミ』

年末のゆらゆら帝国ライブにどうしても行きたくて、リキッドルームの店頭発売に朝から並んでみる。
バンド愛聴歴が短いため、チケットを求めるのは痩せぎすで髪ボサボサのカラーパンツを履いた坂本慎太郎的世界観=カリカ家城みたいな人たちばかりと勝手に想像していたら、列を作るのはいかにもサブカル好きそうな大人しい様相をした子羊ばかり。カリカ家城見たさにカリカ林が群がる、これがサイケデリックというやつか。そういえばみんな胸ポケットに3色ボールペンを挟んでいた。

そんな寒空の下、町山智浩『USAカニバケツ』を読む。
巨乳しか雇わない航空会社の話から、ジュリア・ロバーツがビッチだの、ジークフリート&ロイが友達以上恋人以上だの、中身はゴシップとボンクラの大洪水。一部のレビューでは”ポップカルチャー総まくりの本書はアメリカのB面を網羅!”と紹介されているが、町山智浩の仕事としては完全にA面。グレイテスト・ヒッツだ。
おもにブッシュ政権の矛盾を躍起に追求した前著『底抜け合衆国』が軍部のサーチライトでアメリカ社会の暗部を照らしたとするなら、この本は懐中電灯ひとつ腰にぶらさげて風俗街の裏道をうろつくようなもの。しかしオッパイとカンフー映画村上隆の悪口を熱く語る町山智浩が、私は一番好きだ。
ただ残念なのは、プロフィールから”1997年みうらじゅん賞受賞”が抜けていること。あと”日本において矢口真里とただ二人、<オイラ>の一人称を使う人物”という事実も。