本命チョコにチョコワを渡す小銭マニアの女

芸能人の遭遇譚をwebで綴ることは無粋と知りつつ、迷惑がかからないであろう、ちょっといい話なので。
とある取材で大阪の吉本興業本社へ。しかしお笑いの本丸に乗り込んだのにかかわらず、日帰りの強行スケジュールのため、何の舞台にも寄れない体(てい)たらくぶり。不甲斐なさに切腹と蘇生を繰り返しながら新大阪駅を帰路についていると、右手前方からうめだ花月あがりらしきダイノジの二人が歩いてくるではないか。
私は目を疑った。というのも芸歴10年のコンビが仲良さそうに二人きりで談笑しているのである。結婚30年を迎える夫婦がいまだ性生活に励んでいる告白を聞いたような恥ずかしさと微笑ましさと生々しさと。その光景を遠巻きに見ていればよかったのだが、こちらも大谷氏のサイトで『語らず、笑え』を取り上げてもらったこともある身だ。挨拶しないほど礼儀知らずではないし、優しさに溺れるほど弱くない。『サヨナラは8月のララバイ』ステップを駆使しながらさりげなく接近し声をかけてみたところ、しばらく記憶をたどっていた大谷氏は思い出したらしく、
「あ〜、はいはい、覚えてるよ。あのお笑いレビュー書いたの君か〜。ところで君って、満月ポン吉?」
違う。
どこかのハガキ職人と混合しているようだが、私は満月ポン吉でもなければ三日月ベン助でも銘菓ひよこ太郎でもないし、ましてや車谷長吉でもジョン万次郎でもちょいと寿司太郎でもないのである。その前に誰だよ満月ポン吉って。
もちろん私は丁寧に対応してくれた二人の恩に応えるべく「はい」と力強く頷いた。
先日、編集者に「ウェブログ読んでますよ。でも、あれって作りの部分が多いですよね?」と聞かれたので、「はあ。まあ確かに全部が本当ではないです」と答えたところ、「やっぱり……じゃあ博多行ったのもウソですか」。私は”ハワイ行ったふりして実は夏休みを家で隠れて過ごす”の巻か。どう疑われようと上の話は本当。5%ぐらいは。しかしよく考えたら、2年前のバレンタインデーまさに今日、私は新宿でダイノジの男子限定ライブ『童貞チョコレート』を見ていたのだった。はい、2月14日がバレンタインというのが既に嘘です。