フランスの街娼に向かって「愛をください」

辻仁成ウォッチャーである私の元に興味深いニュースが届く。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050518-00000006-flix-ent
文化の橋を渡しているのである。覚書に乗っ取っているのである。ちょっと目を離しているうちに、辻先生は異国にジェントル・ランドを建設していたのだった。
そんな監視を疎かにしていた反省を含めて、急遽、先生の自伝的小説『刀』を読む。するとこれが大傑作。コピーの「すべてを書け。魂に棲みつく一本の刀が、私を脅す。郊外生まれの少年がロックへ、映画へ、文学へ向かうまで。二度の離婚を経て、女優ナナとパリに漂着するまで。そのすべてを。」だけで8割はカバーできる内容で、主人公の作家にしか姿が見えない霊媒・ヒカルの存在はデビュー作『ピアニシモ』そっくりの設定なため読みやすいし、中山美穂を投影した女優に結婚の決意として「これが俺の覚悟だ」と刀を渡して、彼女が刀を抱えて泣き出すシーンは、横隔膜が痙攣すること必至。早い話が”快く思っていない友人から唐突に届いた、一家がプリントされてしかも微妙に修正が施してある年賀状”なのだ。小説というより、自分勝手極まりない幸福の一方的な告知と考えた方が作品を解釈しやすい。
そして小説の事実関係を洗っていて見つけた3年前の記事。
http://www.sanspo.com/geino/top/gt200206/g_top2002060501.html
この写真が教えてくれるのは、辻にとっての分身的存在・ヒカルとは、『DEEP LOVE』のYoshiではないかということ。これでも物足りない人は、ツッコミどころが宇宙以上に拡散している先生の公式HPへどうぞ。
http://www.j-tsuji-h.com/contents.htm