『カンブリア宮殿』の観客が模範囚100人

さいとう・たかを先生がゲストの『カンブリア宮殿』を見る。密着VTRの内容は『情熱大陸』と9割5分方同じ。事務所の新年会にカメラが潜入して水島新司先生、永井豪先生、ニコニコヒッピーくん(秋元治先生)がコメントするのと寸分変わらないシーンを見た気がする。唯一違ったのは司会の村上龍が羨ましそうに先生のトークに耳を傾けて、「分業制ってイイナ。俺も村上龍事務所をむらかみ・りゅうプロに変えようかナ。原作・執筆は他人に任せて、俺は句読点だけつけるんだ!」と”リュウド社”の構想を膨らませていたことぐらいだ。
それにしても村上龍は重力に抗えない頬肉とスキのある間が三遊亭円楽師匠を強烈に連想させた。そのうち「芝浜」を演じ終えて引退表明したらどうしよう。「あのさマリちゃんさ」「いや私岡部まりじゃないんですけど。どうしたんですか先生!」「僕ねもう引退しようかと思うんだ。思うように作品が書けなくなって」「何言ってるんですか。『69』『テニスボーイの憂鬱』みたいな名作を他の誰が書けるというんですか!」「そうかな?」「そうですよ」「『長崎オランダ村』も?」「あれ誰でも書けますけどね」「ほらやっぱりそう思ってるんだ。僕やっぱりやめるよ」「ちょっと待って。これを見てください!」「何この原稿の束?」「これ先生が昔書いた作品ですよ」「わあ『コックサッカーブルース』に『音楽の彼岸』に『368Y Par4 第2打』だ! これ夢の中で書いた小説だと思ってた。でもやっぱり本当に存在したんだね!」「もうどのブックオフにも置いてませんからね」「……でもなんでこんなことを?」「それは一時期、先生が作家として甘えていたからです。これではきっと先生がダメになると思って、私は「執筆したのは夢です」と原稿を隠した……」「そうだったのか。確かにあれから僕は死にもの狂いで頑張った。『オーディション』でしょ『eメールの達人』でしょ『文体とパスの精度』でしょ」「最後はメールかき集めたやつですけども。さあ先生、これを新作として発表してください!」「じゃあお言葉に甘えて……」「そうこなくちゃ先生、ほらぐっと」「いや、やっぱりやめた」「どうして!?」「夢になるといけねえ」「でもさっき幻冬舎の見城さんがコピー持って帰りましたよ」「ギャフン!」このあと村上龍はキューバに次ぐ地を探す旅に出たという、おなじみ「Sea・バハマ」の一席でございました。