『ラジかるッ』でガラス越しに腕を振っているオール巨人師匠

お笑いには、全世代が理解できる、技術が安定している、安心して見ていられることに重きを置いた『オンエアバトル』もしくはNHK的世界観の「右」が存在し、それに対抗すべく、発想至上主義で、荒削りも受け入れ、一部のお笑い見巧者の心に突き刺さればいい「左」の急先鋒として『M-1グランプリ』は誕生した。
今年、島田紳助は「うまい」という評価基準を強調し、オール巨人は番組終了後、栃木vs茨城の局地戦漫才で開花したU字工事に「君らの漫才は面白い。でも全国で通用するネタも作ってほしい」とアドバイスを送った。私が見るかぎり『M-1』は去年から右傾化を始めたのだ。もちろんこの「右」と「左」は上位・下位概念ではなく、対立概念である。極右芸人は寄席で、極左芸人はインディーズライブで活動を続ける中、保守が集まる場で腕を磨いた生まれだけは右寄りのナイツと、とんがったキャラを押して小ライブの生存競争を勝ち抜いてきたリベラルのオードリー。その「右」と「左」がぶつかりあった末、NON STYLEが優勝した。そして「中道」だけが残った。
今回の番組で誰よりも笑い顔をカメラで抜かれていた矢口真里も「右」「左」に左右されない中道主義者である。そう、彼女はモー娘。出身だけに、センターが好きなのだ。(客席の殺気を感じて緞帳が下りる前に舞台からロケットで脱出)