はじめての、立川談笑(お江戸日本橋亭)

チケットを独占しがちな常連以外の初心者に向けて、定番のネタを見てもらおうという独演会。独演会に6、7回は行った私も席を譲るのが礼儀のような気がしたが、予告された四席を見たことがなかったので資格ありと勝手に解釈して参加する。これまでの人生、あらゆるシチュエーションで最低百回は非・童貞のフリをしてきた私が、まさか童貞のフリをする日が来るとは驚きだ。
演目は「時そば」「金明竹」「堀の内」「片棒・改」。気を抜くとすぐ障害者が登場したり宗教ネタを惜しまない改作ぶりに、連れて行った友人が「悪い人だねえ」とニヤニヤしていたが、作品以上に私がグッときたのは「とくダネ!」でのレポート仕事ぶり。なんでも東京の演芸事情を紹介する企画があったので、三遊亭遊雀を取材し、さらにスタッフには柳家権太楼を推薦して、破門で袂を絶った二人を同じフレームに収めようと画策したらしい。別れた番(つがい)を交わらせたがる壮大な意志に、邪悪を超えて変態性を感じた。